ワルツ・ターン





 ワルツは、13世紀頃、チロル地方で踊られていたヴェッラー [Weller] というカップルの踊りが起源です。日本では、円舞曲とも言われます。
 カップルによる踊りでターンが多く、優雅な音楽と流れるような踊りは女性に人気があります。
 ワルツは、各国の好み、フォークロアによって踊りに特徴があります。速い音楽でターンを楽しむウインナー・ワルツ、ゆっくりとしたイングリッシュ・ワルツ、素朴なフォークダンス・ワルツ、ラウンド・ダンスのワルツ、イギリスの古い踊りであるオールド・タイム・ダンスのワルツなどなど、多種多様です。
 また、ワルツ以前の踊りである、フランスのメヌエット、ポーランドのクヤビアク、チェコのソウセツカ。ウインナー・ワルツが宮廷舞踊の花形ならば、民衆の3拍子の代表でもあったアルプス地方のレンドラー。イングリッシュ・カントリー・ダンスの3拍子のトラベリング・ステップ。
 これらのワルツの踊りと3拍子のワルツ以前の踊りは、どれもステップに特徴があり、カップルでのターンの方法も異なります。パーティーなどに行くと、何でもかんでも、フォークダンスの初心者講習会で習うターンで済ませる人もいますが、経験を積んできたら、それぞれの動きをそれぞれの特徴で踊ってみるのも実に楽しいと思います。
 ここでは、ワルツ・ターンの基本的な動きをお伝えし、ラウンド・ダンス、ウインナー・ワルツのターンにも触れておきました。


●方向の用語
 回転の方向に混乱が生じる恐れがありますので、簡単に方向についての用語を解説します。言葉で覚えるより、イメージで覚えた方がいいでしょう。方向、コースなどは、結果的に図形を描くことが多いので頭の中で、自分たちを客観的に頭上から見たイメージでとらえます。例えば、右回りと言えば、一人で円周上を時計回りに移動することを言います。その円の大きさによりますが、円心に右肩を向けて円周上を回転します。

○LOD
 全体で動く時の進行方向です。大きな円周上を反時計回りに進む方向です。この方向は、ほぼ万国共通で、日本の盆踊り、欧米の踊りでも踊りの進む方向と言えば、円心に左肩を向けた時の身体が向いた方向です。
○逆LOD
 全体で動く時の進行方向です。LODの逆方向で、円心に右肩を向けた時の身体が向いた方向です。
○CW
 カップルで動く時の回転方向です。CWとは、クロック・ワイズのことで、時計回りの意味です。
○CCW
 カップルで動く時の回転方向です。CCWとは、カウンター・クロック・ワイズのことで、反時計回りの意味です。
○右回り
 一人で動く時の回転方向です。右肩を引く様にして回転する方向です。時計回りになります。
○左回り
 一人で動く時の回転方向です。左肩を引く様にして回転する方向です。反時計回りになります。


●ワルツ・ステップ
 ワルツ・ステップを使ってカップルでターンすることをワルツ・ターン、またはターニング・ワルツと言います。
 最初に基本となるワルツ・ステップをおさらいしておきましょう。

○3/4拍子です。(ct.123)
 1拍目にアクセントのある音楽を使用します。「ズン・チャッ・チャッ」という風にリズムをとると分かりやすいです。
○ステップは、「ステップ・ステップ・クローズ」、または「ステップ・ステップ・ステップ」です。
○ステップの歩幅は、大きく、小さく、小さくです。
○ダウン、アップ、アップという上下動があります。

ワルツ・ステップ
カウント
ステップ ステップ ステップ クローズ(ステップ)
歩幅 大きく 小さく 小さく
上下動 ダウン アップ アップ

●フォークダンス・ワルツ・ターン
 フォーク・ダンス・ワルツ・ターンという言い方はないのですが、適当な用語が見つからなかったのでこの名称にします。古くからヨーロッパで踊られている素朴なワルツ・ターンです。アメリカなどでも、ラウンド・ダンス以外では、このステップを使うのが一般的です。
 初心者教室では、まずこのワルツ・ターンを練習します。
 ステップは、「ターン・ステップ・クローズ」です。

○男性のステップ
 男性は、壁向きのクローズド・ポジションから始めます。
 左足を左斜め前方にやや大きくステップし、身体を右回りさせながら右足を右横方向に出す。この時、股関節の回転が内回りにならないように気をつけます。内回りとは、内股状態になることで、両足のつま先が近づき、踵が離れた状態です。フォークダンスのワルツ・ターンは素朴なものが多く、足のポジションなどにこだわりすぎると原型から離れてしまいますが、足は広げていないと回りにくいので、30度〜60度をキープします。キープすれば、足が外回りになります。
 右足を右横にステップ。左足を右足に閉じてステップ。最後に円内向きになります。
 続けて、右足を小さく右斜め前にステップ、身体を右回りさせながら左足を左横方向に出す。左足を左横にステップ、右足を左足に閉じてステップ。最後は壁向きになります。

○女性のステップ
 女性は、円内向きのクローズド・ポジションから始めます。男性の2小節目からの動きから始めることになります。
 右足を小さく右斜め前にステップ、身体を右回りさせながら左足を左横方向に出す。左足を左横にステップ、右足を左足に閉じてステップ。最後は壁向きになります。
 続けて、左足を左斜め前方にやや大きくステップし、身体を右回りさせながら右足を右横方向に出す。女性もこの時に内股にならない様に気をつけます。右足を右横にステップ。左足を右足に閉じてステップ。最後に円内向きになります。

 男女ともに、1拍目が左足の時は一歩目を大きく出し、右足の時は小さく出します。カップル・ターンは、一人が回転し、一人が相手が回転するときの軸になります。フォークダンスのワルツ・ターンでは、左足スタートの時が車輪、右足スタートの時が軸になります。よって、このワルツ・ターンでは、男性の歩幅は、「大きく、小さく、小さく、小さく、小さく、小さく」であり、女性は、「小さく、小さく、小さく、大きく、小さく、小さく」となります。

●ラウンド・ダンス・ワルツ・ターン
 主にラウンド・ダンスで行うターンです。通常はターニング・ワルツと言います。
 初期のラウンド・ダンスでは、テクニックが確立しておらず、フォークダンス的なワルツ・ターンをしていましたが、ラウンド・ダンスが人気となり、社交ダンス的な動きへと変化しました。
 フォークダンスのワルツ・ターンとは、ステップが異なりますので別物です。一旦、フォークダンス・ワルツ・ターンから離れ、まったく違うターンなのだと認識すると上達が早いと思います。

■ナチュラル・ターン
 ナチュラル・ターンは、カップルでCW(時計回り)回転を繰り返しながら、LOD方向に進みます。男性が逆LOD向きのクローズド・ポジションから始めます。
 ステップは、「バック・ステップ、ターン、クローズ」と「フォワード・ターン・クローズ」の組み合わせによります。

○男性のステップ
 男性は、逆LOD向きのクローズド・ポジションから始めます。
 左足後退からスタートします。左足を後ろに真っ直ぐにステップし、右足を右横に開きながら、カップルでCWに回転します。右足を右横にステップ、CWの回転を続け左足を右足に閉じてステップ。LOD向きになります。
 男性は、右足前進から続けます。右足を真っ直ぐに前にステップし、左足を左横に開きながら、カップルでCWに回転します。左足を左横にステップ、CWの回転を続け右足を左足に閉じてステップ。

○女性のステップ
 女性は、LOD向きのクローズド・ポジションから始めます。
 右足前進からスタートします。右足を真っ直ぐに前にステップし、左足を左横に開きながら、カップルでCWに回転します。左足を左横にステップ、CWの回転を続け右足を左足に閉じてステップ。逆LOD向きになります。
 女性は、左足後退から続けます。左足を後ろに真っ直ぐにステップし、右足を右横に開きながら、カップルでCWに回転します。右足を右横にステップ、CWの回転を続け左足を右足に閉じてステップ。LOD向きになります。

 通常は、前の小節で男性マヌーバのフィギュアが行われます。マヌーバとは、「防ぐ」という意味があると聞きましたが、事実かどうかは不明です。動きとしては、男性は右足からの3歩でLOD向きになっている女性の前に立ちます。つまり、3歩で男性が逆LOD向きになる動きです。マヌーバをすることによって、LOD上を移動するターニング・ワルツが定着しました。
 ターニング・ワルツは、ほとんどの踊りにおいては、2小節で3/4回転します。つまり、最後は男性が壁向きで終わるのが一般的です。
 フォークダンス・ワルツ・ターンとは違い、1拍目に後退する方が軸になります。つまり、前進よりも歩幅を小さくしてステップします。ナチュラル・ターンの場合は、左足を後退させる時、リバース・ターンでは右足後退の時にステップが大きくならないように調整します。

■リバース・ターン
 リバース・ターンは、カップルでCCW(反時計回り)回転を繰り返しながら、LOD方向に進みます。男性がLOD向きのクローズド・ポジションから始めます。
 ナチュラル・ターンとリバース・ターンの最大の違いは、カップルの回転方向です。ナチュラル・ターンは、CWに回転しますが、リバース・ターンではCCWに回転します。もし、ナチュラル・ターンとリバース・ターンを隣で踊ったなら、動きはまったく左右対称になります。ただし、男女の位置は逆です。

○男性のステップ
 男性は、LOD向きのクローズド・ポジションから始めます。
 左足前進からスタートします。左足を真っ直ぐに前にステップし、右足を右横に開きながら、カップルでCCWに回転します。右足を右横にステップ、CCWの回転を続け、左足を右足に閉じてステップ。逆LOD向きになります。
 次に右足後退から続けます。右足を真っ直ぐに後にステップし、左足を左横に開きながら、カップルでCCWに回転します。左足を左横にステップ、CCWの回転を続け、右足を左足に閉じてステップ。最後はLOD向きになります。
 ただし、多くの場合、次のフィギュアが男性壁向きのため、リバース・ターンの多くは、男性壁向きで終了します。

○女性のステップ
 女性は、逆LOD向きのクローズド・ポジションから始めます。
 右足後退からスタートします。右足を真っ直ぐに後にステップし、左足を左横に開きながら、カップルでCCWに回転します。左足を左横にステップ、CCWの回転を続け、右足を左足に閉じてステップ。LOD向きになります。
 次に左足前進から続けます。左足を真っ直ぐに前にステップし、右足を右横に開きながら、カップルでCCWに回転します。右足を右横にステップ、CCWの回転を続け、左足を右足に閉じてステップ。最後は逆LOD向きになります。
 ただし、多くの場合、次のフィギュアが男性壁向きのため、リバース・ターンの多くは、女性円内向きで終了します。

 前のフィギュアの最後にリバース・ターンに入る準備として、男性LOD向きのクローズド・ポジションが指示されます。多くは、ピック・アップという動作です。
 ラウンド・ダンスのナチュラル・ターンと同じく、フォークダンス・ワルツ・ターンとは違い、1拍目に後退する方が軸になります。つまり、前進よりも歩幅を小さくしてステップします。リバース・ターンでは右足後退の時にステップが大きくならないように調整します。

●オールド・タイム・ダンスのワルツ・ターン
 オールド・タイム・ダンスとは、イギリスの古い時代のカップル・ダンスで、フォークダンスと社交ダンスのつなぎの頃発展したダンスです。
 足を60度に開いた状態をキープして踊ります。ステップする足の位置の指示もあります。特殊な回転のため、このターンもフォークダンス・ターン、ラウンド・ダンス・ターンとは別物としてとらえた方がいいでしょう。
 ステップは、「ステップ、クローズ、ターン」と「ステップ、ターン、クローズ」の組み合わせによります。
 男性が壁向き、女性円心向きのクローズド・ポジションから始めます。

○男性のステップ
 男性は、壁向きのクローズド・ポジションから始めます。足を60度に開いた状態をキープし、左足を前方にステップ。カップルでCWに回転しながら、左足の踵のところに右足のつま先をつけてステップ。右足後の第5ポジションになります。両足ライズした状態で、ボールを中心に左右の足をそれぞれ右に回転させ、身体を右に回転する。最後は左足に体重をのせ、右足の踵を左足のつま先につけます。右足前の第5ポジションとなり、円内を向きます。
 次に右足をLOD方向に前進ステップ、カップルでCWに回転しながら左足を左横にステップ、右足の踵を左足のつま先の前につけてステップ。右足前の第5ポジションとなり、壁向きになります。

○女性のステップ
 女性は、円内向きのクローズド・ポジションから始めます。足を60度に開いた状態をキープし、右足をLOD方向に前進ステップ、カップルでCWに回転しながら左足を左横にステップ、右足の踵を左足のつま先の前につけてステップ。右足前の第5ポジションとなり、壁向きになります。
 次に左足を前方にステップ。カップルでCWに回転しながら、左足の踵のところに右足のつま先をつけてステップ。右足後の第5ポジションになります。両足ライズした状態で、ボールを中心に左右の足をそれぞれ右に回転させ、身体を右に回転する。最後は左足に体重をのせ、右足の踵を左足のつま先につけます。右足前の第5ポジションとなり、円内を向きます。

 1拍目が左足スタートの場合は、ロータリーといい、右足スタートの場合はプログレッシブと言います。ロータリーは車輪、プログレッシブは軸と同じ意味です。

●ウインナー・ワルツのワルツ・ターン
 ウィーンの速いテンポのワルツです。社交ダンスでも踊られており、ヴェニーズ・ワルツという名称があります。フィギュアは、ナチュラル・ターンとリバース・ターンが主です。
 
■ナチュラル・ターン
 ナチュラル・ターンは、カップルでCW(時計回り)回転を繰り返しながら、LOD方向に進みます。
 まずは、回転をせず、ボックス・パターンで理解しましょう。クローズド・ポジション、男性LOD向きでスタンバイします。
 男性は、右足を前、左足を左横へ、右足を閉じる。続けて、左足を後、右足を右横へ、左足を閉じる。
 女性は、左足を後、右足を右横へ、左足を閉じる。続けて、右足を前、左足を左横へ、右足を閉じる。
 つまり、男性の前半の動きと女性の後半の動きはイコールであり、男性の後半の動きと女性の前半の動きはイコールです。このボックス・パターンを練習し、理解できたら、2小節でCWにカップルで一回転しながら、LOD方向に進みます。動きとしては、「ターン・ターン・クローズ」の繰り返しになります。

○男性のステップ
 男性がLODを向き、クローズド・ポジションに組みます。男性は、右足前進からスタートします。右足を前にステップしたら、CWに回転しながら左足を左横方向にステップします。右足を閉じ、男性が逆LOD向きになります。
 左足後退から続けます。左足を後ろにステップしたら、CWに回転しながら右足を右横方向にステップします。左足を閉じ、最初の様に男性LOD向きになります。

○女性のステップ
 女性が逆LODを向き、クローズド・ポジションに組みます。女性は、左足後退からスタートします。左足を後ろにステップしたら、CWに回転しながら右足を右横方向にステップします。左足を閉じ、女性はLOD向きになります。
 女性は、右足前進から続けます。右足を前にステップしたら、CWに回転しながら左足を左横方向にステップします。右足を閉じ、女性が逆LOD向きになります。

■リバース・ターン
 リバース・ターンは、カップルでCCW(反時計回り)回転を繰り返しながら、LOD方向に進みます。
 まずは、回転をせず、ボックス・パターンで理解しましょう。クローズド・ポジション、男性LOD向きでスタンバイします。
 男性は、左足を前、右足を右横へ、左足を閉じる。続けて、右足を後、左足を左横へ、右足を閉じる。
 女性は、右足を後、左足を左横へ、右足を閉じる。続けて、左足を前、右足を右横へ、左足を閉じる。
 つまり、男性の前半の動きと女性の後半の動きはイコールであり、男性の後半の動きと女性の前半の動きはイコールです。このボックス・パターンを練習し、理解できたら、2小節でCCWにカップルで一回転しながら、LOD方向に進みます。動きとしては、「ターン・ターン・クローズ」の繰り返しになります。

○男性のステップ
 男性がLODを向き、クローズド・ポジションに組みます。男性は、左足前進からスタートします。左足を前にステップしたら、CCWに回転しながら右足を右横にステップします。次に右足の前第5ポジションに左足をステップします。右足のつま先に左足の踵を閉じる形です。最後に男性は逆LOD向きになります。
 右足後退から続けます。右足を後ろにステップしたら、CCWに回転しながら左足を左横方向にステップします。右足を閉じ、最初の様に男性はLOD向きになります。

○女性のステップ
 女性は逆LOD向き、クローズド・ポジションに組みます。右足を後ろにステップしたら、CCWに回転しながら左足を左横方向にステップします。右足を閉じ、女性はLOD向きになります。
 女性は、左足前進から続けます。左足を前にステップしたら、CCWに回転しながら右足を右横にステップします。次に右足の前第5ポジションに左足をステップします。右足のつま先に左足の踵を閉じる形です。最後に女性は逆LOD向きになります。

●2008-11-12-001 作成