Oklahoma Mixer
オクラホマ・ミクサー
アメリカ

 日本では、最も知られているフォークダンスのひとつで、フォークダンスの代名詞的でもあります。
 アメリカのオクラホマで踊られていたショーティッシュというジャンルの踊りを元にして、日本でのフォークダンス指導者の草分け的存在である玉置真吉氏が日本人向けに手直しをして普及させたのがこの踊りです。ショーティッシュとは、ヨーロッパ各地、アメリカ、メキシコなどで踊り続けられているインターナショナル・ダンスの一つで、3歩進んでホップするステップで踊ります。
 最初は、オクラホマ・ショーティッシュというタイトルの踊りでしたが、ホップが多く、日本人には不評でした。その後、「わらの中の七面鳥」というアメリカの黒人の間で流行していた曲を使い、ホップをしないように作り替えることによって、日本人に受け入れられフォークダンスの定番中の定番となりました。音楽を遅くして、それに合わせてホップをしないようにしたことが大ヒットの要因だと思われます。
 日本版のオクラホマ・ミクサーは、当然ながらアメリカでは踊られていません。しかし、誕生から半世紀以上経ったにも関わらず、日本において踊られているのは面白い現象だと思います。

 タイプ カップル・ミクサー・ダンス
 男女のカップルによる踊りをカップル・ダンスといい、踊る相手をパートナーと言います。パートナーが次々と変わる踊りをカップル・ミクサー・ダンスと言います。

 音 楽 4/4拍子 1 2 3 4
 強拍 - 弱拍 - 中拍 - 弱拍
 踊りを解説する場合、カウントによって踊りの拍子を数えます。
 この解説では、カウントは (ct ) という略語で表わしています。 (ct.1) とは、第1カウントを意味し、(ct.2) とは、第2カウントを意味します。(ct.1-2) の場合は、2カウントを使って動作することです。
 曲は、「わらの中の七面鳥」を使います。
 オクラホマ・ミクサーを「わらの中の七面鳥」の音楽を使って踊っているのは、おそらく日本だけだと思います。

 隊 形 ダブル・サークル
 男女ともにLODを向いたダブル・サークル
 LODとは、ダンスの進行方向で、円心に向って右の方向です。日本の盆踊りでも、西洋の行進ダンス、カップル・ダンス、ミクサー・ダンス、チェーン・ダンスでもLODと言えば時計の針とは逆の回り方です。競馬や運動会の競走も同方向の回転です。
 きれいなダブル・サークルをつくるには、まず男性は女性を右に連れて、参加者全員が円の中心を向き、大きな円を作ります。その時、両隣の人とも手をつなぎ、出来る限り真円を作るようにします。これをシングル・サークルといいます。
 シングル・サークルをつくったら、カップルで手をつなぎ、男性の左の人との連手、女性の右の人との連手は離します。カップル単位になったら、女性はその位置で立ち、男性は円内に入り、女性の前に向き合って立ちます。これで、男性が円外向き、女性円心向きのダブル・サークルが出来ました。
 さらに男女がLODを向いた隊形が、LOD向きのダブル・サークルになります。
 適当にダブル・サークルを作るとカップル間が等間隔になりません。踊りやすい隊形を作るために以上の方法が有効です。

 ポジション ヴァルソビアナ・ポジション
 男女がLODを向いたダブル・サークルになり、ヴァルソビアナ・ポジションに組みます。
 男性は女性の左、やや後方に立ちます。男性は左手を手のひらを上にして胸の前に伸ばして上げ、女性は男性の左手の上に、自分の左手を手のひらを下にしてのせます。親指は、男性の手の下に置きます。ちょうど自分の中指の第二関節の下あたりに、男性の手のひらから少し離れたところにホールドします。女性は男性の手を握るのではなくホールドをします。男性は左手の親指を女性の左手の上から押えてホールドします。
 女性の右手は手のひらを上にして右肩の上にホールドします。この時、右手は脇から少し離します。男性は右手を女性の首の後ろから横に伸ばし、手の甲が上で女性の右手と連手します。
 以上が本来のヴァルソビアナ・ポジションです。ヨーロッパでは女性が手のひらを上にすることは少ないので、連手の際、女性は手のひらを下に向けます。これは、女性の優雅さを表現するためだけではなく、男性が女性をリードしやすくするためでもあります。
 通常、ヴァルソビアナ・ポジションに組んだ場合、男女のスタートする足は同じです。オクラホマ・ミクサーでは、男女とも左足スタートになります。

 アメリカの踊りの場合、最重要点は楽しむ事ですので、ポジションに細かい注意を払うことは少なくなっており、あまり形にこだわらず、左手どうしを男性の胸の前、右手どうしを女性の右肩の上で連手する風にすると良いと思います。
 ちなみに、仲の良い男女の場合、男性の右腕に、まるで腕枕のように女性が頭をのせる、という説もあります。一度試されてみるとその味がわかります。

ヴァルソビアナ
 [うんちく]
 ヴァルソビアとは、ラテン語で「ワルシャワ」のことです。ポーランドの首都ワルシャワです。
 フランスを中心にバロック時代に流行した踊りにヴァルソビンヌというダンスがありました。意味は、「ワルシャワ舞踊」です。ステップがマズルカのため、この名がついたのだと思います。マズルカはポーランド発祥の踊りだからです。この踊りの中に出てくるポジションが、ヴァルソビアナ・ポジションです。
 それは、ポロネーズの第二ポジションの右手を女性の右肩の上で取り合ったポジションです。

 ステップ ショーティッシュ・ステップ
 左足よりスタートする場合で説明します。
左足を前にステップ (ct.1)
右足を左足に閉じてステップ (ct.2)
左足をさらに前方にステップ (ct.3)
左足でホップ (ct.4)
 以上が基本的なショーティッシュのステップです。
 第1ステップ、第3ステップの歩幅は同じ長さにします。第2ステップの閉じる動きをクローズと言います。クローズは、足を揃える動きですが、単に靴の部分を揃えるのではなく、膝や太ももも合わせるようにします。
 通常、ショーティッシュを2回した後、ステップ・ホップ4回を行います。

オクラホマ・ミクサーのショーティッシュ
 オクラホマ・ミクサーの場合は、ショーティッシュの変形ステップを使います。4呼間目のホップをせず、そのままの状態でホールド(維持)するか、ホップの代わりに膝の屈伸をし、逆足を前の方に持ってきます。
その後のステップ・ホップもホップをせずに、そのままの状態でホールド(維持)するか、ホップの代わりに膝の屈伸をし、逆足を前の方に持ってきます。

 
小節 (4/4) Dance
前奏
 LOD向きのヴァルソビアナ・ポジションになり、前奏を楽しみます。日本人は、前奏の時、単に突っ立って待っている方が多いのですが、前奏は踊りの準備タイムですので、リズムを楽しみながら待つようにするとよいでしょう。
 前奏の最後に右足に体重をかけて、踊り始める準備を整えます。

Part-1 ショーティッシュ×2 ウォーク×4
 男女ともLODを向き、ショーティッシュを2回、スロー・ウォークを4回でLODに進みます。

 1〜 男女とも、左足より前方にステップ (ct.1)
右足を左足に閉じてステップ (ct.2)
左足を前方にステップ (ct.3)
その状態を保つ(ホールド) (ct.4)
 2〜 同様に右足よりステップ、クローズ、ステップ、ホールド。
 3〜4 左足より、2呼間に1歩のゆっくりとしたステップ4歩で前進 (ct.1-8)

 ショーティッシュの4呼間目のホールド、スロー・ウォークの2呼間目は、支持足の膝を屈伸させて拍子を取りながら、遊足(逆足)を前に振り出す様にしてもOKです。

Part-2 ヒール・トー(あいさつ)と位置交代 ヒール・トーとミクサー

 1〜 男女とも、左足のかかとを前にタッチ (ct.1-2)
左足のつま先を右足のかかとの横にタッチ (ct.3-4)
右手を離し、左手だけの連手になる。
 2〜 男性は、その場で左足より3歩ステップし (ct.1-3)、ホールドする (ct.4)
その時、男性は女性を円内に進む様に左手でリードし、男性はLOD向きになる。
女性は、左足より3歩で男性の前を通って円内に進み (ct.1-3)、最後に逆LOD向きになる (ct.4)

 男女のあいさつと位置交代のパートですが、少々不規則です。
 男性はその場で足踏みをし、女性が円内に移動します。男性が軸となり、女性がくるりと男性の周りを半周する動きです。男性が左手を円内に持ってくるようにリードすれば女性が迷いません。
 男性は、3歩の足踏みなのですが、実際には次のように動きます。
 タッチした左足を右足のすぐ後ろにステップ、右足をほんの少しだけ右横に開いてステップ、左足を小さく右足前にステップ、ホールド。動きとしては足踏みですが、ほんの少しだけ、円外に側進します。
 女性は、ステップ・クローズ・ステップ・ホールドで左回りに半回転します。
 最後は、左手連手のまま、男性はLOD向き、女性は逆LOD向きとなりますが、上体はパートナーの方を向く様にします。

 3〜 男女とも、右足のかかとを前にタッチ (ct.1-2)
右足のつま先を左足のかかとの横にタッチ (ct.3-4)
 4〜 左手の連手を離し、右足から3歩でパートナーと別れ、新しいパートナーのところに行きます (ct.1-4)

 このヒール・トーのタッチは、これまでのパートナーへの最後の挨拶です。お礼の挨拶ですので、きちんと上体をパートナーに向けてアイ・コンタクトをします。
 パートナーに挨拶した後は、問題のミクサーの部分です。このミクサーの仕方が理解できていなければ、踊りが崩壊しますので、ミクサーの部分は練習を何度もした方がいいでしょう。
男性は、新しいパートナーに向って、右足から、ステップ・クローズ・ステップ・ホールドで進みます。新しいパートナーとは、今までのパートナーの一人前の女性です。
女性は、右足からステップ・クローズ・ステップ・ホールドで左回りに半回転します。つまり、女性はヒール・トーとステップ・クローズ・ステップ・ホールドを2回行い、男性が立っていたところを中心にして一回転したことになります。

〜以上をくりかえす。

 Note

●指導の仕方
1. 準備をする。
2. 4カップル位で一通り踊って見せる。
3. 基本ステップを練習する。
4. 踊り方を説明し練習する。
5. リハーサルを行う。
6. 本番で楽しむ。

1. 準備をする
 会場の準備、音響の準備、音源の準備をします。マイク・チェック、音源の頭出しの仕方、音量などのチェックを忘れないようにしておきます。
 参加者が揃ったら、ストレッチを行い身体をならし、その後指導者が会場の中央に立ち、指導者を囲むようにみんなに輪になってもらいます。

2. 4カップル位で一通り踊って見せる。
 まず、参加者全員でシングル・サークルを作ります。この時はまだ男女で並ぶ必要はありません。
 サークルが出来たら、手を離してもらいます。
 サークルの中で手本としての踊りを指導者、リーダーによって踊って見せます。参加者の人数にもよりますが、4カップルで踊って見せるのが理想です。出来れば、男女で踊ります。
 きちんと音楽を鳴らし、ダンスを見せます。音楽を聞いてもらうこと、踊りの雰囲気を知ってもらうこと、どのような動きかを漠然とでもいいので知ってもらうことのために踊ってみせます。
 この時、もっとも重要なことは、踊り手が踊りを楽しむことです。無理におどけたり、ふざけたり、笑いを誘うことなく、踊りを踊りとして踊って見せます。そのため、十分な練習が必要です。その8人は人の踊りを見なくても踊れるようにします。つまり自立した踊りです。自立し、余裕を持って踊ります。
 考えながら踊ったり、見栄体裁を持つと踊りは楽しめません。男性はカウ・ボーイになり、女性は美しい娘をイメージしましょう。または、「風と共に去りぬ」のレッド・バトラーとスカーレット・オハラを演じるのもいいと思います。見せるときは演じた方が、やりやすいし絵になります。
 踊って見せることは、つかみです。つかみで失敗すると取り返しがつかないので、指導者・リーダーはぜひ踊りこみをし、楽しめるレベルになってから、指導にあたって頂きたいと思います。
 踊りの中で手の使い方、視線の送り方が雰囲気を作ります。手は突っ張ることなく、肩の力を抜いて、脇を締めずに横に開いた状態をホールドします。特に女性は、両手を下ろすことなくホールドします。視線を合わせることは日本人にとって不得意です。生活の中で、相手の目を見る習慣がありません。視線を合わせることによって、2人の踊りにつながりが生まれます。無視して踊れば、つながりが消え、心のない動きになってしまいます。
 参加者に目を合わせることを強制しては雰囲気がこわれますので、指導者、リーダーが踊りの中で実施してみましょう。言葉でなく、行動で示すことになります。

3. 基本ステップを練習する。
 踊って見せた後、参加者に立ってもらい、音楽に合わせてLOD方向に歩いてもらいます。ウォーミング・アップです。ここでは、まだシングル・サークルのままで動きます。音楽を流し、2呼間に1歩の割で、ゆっくりと歩きリズムをとらえます。リーダーはサークルの中で一緒に動きます。
 次に左足から、クイック・クイック・スロー、速く・速く・ゆっくりというリズムで動きます。その時、2歩目はきちん閉じるように指示します。このクローズの動きは、慣れない人には割と難しいものです。改まって練習すると頭が働き、かえってぎこちない動きになるので、さきほどのスロー・ウォークに続けて、さりげなくクイックの動きとクローズの動きを入れてみます。
 ステップ・クローズ・ステップを左足から始めて2回行い、続けてスロー・ウォークを4回行います。8呼間+8呼間の16呼間の動きを繰り返し練習します。
 続けて、左足のかかとを前にタッチ、右足のかかとの横に左足のつま先をタッチ、左足からステップ・クローズ・ステップ。右足のかかとを前にタッチ、左足のかかとの横に右足のつま先をタッチ、右足からステップ・クローズ・ステップ。
 以上を音楽に合わせて練習します。

4. 踊り方を説明し練習する。
 いよいよ踊り方の説明です。
 参加者全員で一度シングル・サークルを作ります。隣の人との連手を指示します。そうすると、男性どうし、女性どうしで手をつなぐことになります。これでは踊れないので、いったん手を離し、男性だけが円内に入り男性だけのサークルを作ります。その男性の後ろに女性が立ちます。パートナーの調整が出来たら、もう一度全員でシングル・サークルを作り、パートナー以外の人との手を離し、カップルでLODを向きます。右手を女性の肩の上で連手、左手を男性の胸の前で連手し、ヴァルソビアナ・ポジションになります。
 カウントで動いてみましょう。基本で練習したように左足からステップ・クローズ・ステップ2回、スロー・ステップ4回でLODに前進します。ここからは、男女の動きが異なるのでまずは男性の練習から行います。女性は、少し離れたところで待機します。
 男性は、左足でヒール・トーをしたら、左足から3歩その場でステップ、右足でヒール・トーをしたら、LODに3歩前進します。これを何度か練習したら、次は女性の番です。
 女性は、左足でヒール・トーをしたら、男性が立っていたところを中心にして左回りに半回転します。右足でヒール・トーをしたら、同様に左回りに半回転し、元の位置に戻ります。結果的に一回転したことになります。これを何度か練習したら、次は男女で行います。
 左足ヒール・トーの後は、右手を離し、男性はその場で3歩、女性は左回り半回転。左手連手のまま、右足ヒール・トーでミクサー。
 ミクサーの仕方はしっかり練習しましょう。
 男性は、左手をすぐに離すのではなく、1呼間目はまだパートナーに手を残すようにします。連手を離したら下げずにその高さで手を返し、手のひらを上にして新しい女性の方に手を伸ばすようにします。女性は左手を連手から離れた状態でホールドし、手のひらを下に向けると、新しい男性の左手の上にのせやすくなります。
 男女共、1呼間目の右足を出した時に右手を上げ、新しいパートナーと軽く連手します。女性は左回りをしていますので、連手した右手を自分の右肩の上に持っていきます。男性はそれをリードします。
 練習としては、男女共右足を前に出した時、左手をつないだまま、新しいパートナーと右手もつなぎます。そうすると、全員が連なった大きなシングル・サークルが出来ます。その後、左手を離して、右手を女性の右肩上に持っていきながら、男性はまっすぐに進むようにショーティッシュを続け、女性は左回りをしながらショーティッシュを続けます。最後に左手も連手してヴァルソビアナ・ポジションになります。
 この練習でミクサーのコツを全員が把握したのを確認したら、徐々に両手をつないでいる時間をなくし、スムーズなミクサーになる様にします。
 混乱がなくなったら、最初から一通り通しの練習をします。最初の踊りを忘れている場合が多いので、手を抜かずにもう一度順番を伝えながら動きます。カウントで踊った後、音楽をかけ、ある程度踊ったら音楽を止めます。
 出来ていなかったところを確認し、練習をしたら、「今度は最後まで踊ってみます」と伝え、実際に音楽を最後まで掛けます。乱れても、ある程度無視し動いてみます。踊り終わったら、特に気になるところがあれば注意をし、何度か音楽をかけて踊ります。

5. リハーサルを行う。
 リハーサルというのは、最終けいこです。別に舞台に立つとか、誰かに見せるのが目的ではないと思いますが、ひとつの到達点というのを意識してもらうためにこの言葉を使うといいでしょう。
 これまでは、音楽に合わせて動いたに過ぎず、踊りとは言い難いものがあります。フォークダンスとは、マス・ゲームではありませんので、動きを合わせるだけでは足りていません。
 ダンスとは、感情や意思の伝達、表現、交流などを目的としたリズミカルな身体動作であり、単に音楽に合わせて動くものではありません。このオクラホマ・ミクサーは、参加者が相手を変えながら、みんなとのつながりを実感し、みんなとの交流を行うものです。親睦の情を表現し、このひと時の喜び、幸せを共有します。
 男女が相手を無視し、自分勝手に動いているのでは、つながりは起こりません。
 「では、本番に入る前に最終チェック、リハーサルをしましょう」
 最後にもう一度踊りを説明しながら、踊りをチェックし、音楽をかけて踊ってみます。

6. 本番で楽しむ。
 「いよ、いよ、本番です。西部劇のカーボーイと町の娘になったつもりで、ぜひ踊りを楽しんでください」
 最終的には、きちんと動くよりも楽しみながら踊ることです。多少のミスは気にせず、頭ではなく心で踊ります。指導者やリーダーも踊りの輪に入り、みんなで楽しみましょう。


2008-10-20 001 作成
2008-10-24 002 部分訂正
2009-05-30 003 部分訂正

JoJon